SAYONARA

「背、伸びたね」

「気づいた? 柚月を抜かすまで黙ってようと思ったのに」

 そう言って功は笑っていた。彼はまだ気付いていないんだろう。恐らく彼と一センチも差はないので、目線はそこまで変わっていない。

 今まで弟だった彼が別の誰かにかわってしまったようなそんな違和感があった。

「まだ伸びているの?」

「半年で十センチは伸びたよ。あと十はほしいよな」

 そう言うと、功はまた笑っていた。

 少しだけ彼が遠いところにいってしまった気がした。

 あたしは目の前の彼が功だという確信を持ちたくて、問いかけた。

「功は好きな子いるの?」

「はあ?」

 彼はあからさまに変な顔をする。

「知りたいの?」

 謎解きをするかのように首を傾げ、あたしを見る。