SAYONARA

 その頃の功は既に部活に夢中で、勉強なんて二の次だ。二科目あわせてもあたしの一科目の点数に届かないこともよくあった。おばさんたちがそんな彼の成績を気にしていたことも知っていた。

「柚月は俺の姉みたいだよな」

 弟と思っていたあたしはその言葉に嫌な思いをすることなかった。大げさに肩をすくめる。

「じゃあ、迷惑かけないように頑張ってよね。あ……」

 姉にと言おうとした言葉がすっと消えていく。

 功があたしの隣に並び、目線の違いに気づいた。最近、その視線が少しだけ上がってきたのには気づいていたが、上向きに変わったことには気づかなかったのだ。

 あたしは女の子の中では背が高く、あたしより背の低い男はまだ多い。

 だから、まさか彼に抜かれるとは思いもしなかった。

「どうかした?」

 功が不思議そうな顔をする。