『君は本当にしたたかだね』


「お褒めの言葉と受け取っておく」


張り切った弓のような細い目が更に細まる。





カシャリと何かを構えるような音。


『殺すよ?』


抑揚のない、チェシャ猫の言葉。


いや最初っからあるとは言えなかったけど、凍てつくような声だった。


『君は、どうも僕が君を殺せないと思ってるみたいだね』


「……俺を、殺すか?」


『さてね、どうしようか?』


チェシャ猫の尾がご機嫌にもブラブラと揺れる。


イニシアチブを握ったから。とは想像に難くない。


ふと、背中に刺さるものを感じた。


振り向くと、あぁ。


陽一を覗いた全員が俺とチェシャ猫の対峙を見つめている。


何だかその様子は告白するクラスメートを好奇心で覗く野次馬みたいだ。