「撃てないのか?まぁ、そうだろうな。お前はそういう奴だ。大事な所で、何もできない」
「…何だと?」
「だってそうだろ?遥が撃たれた時、お前は何していた?遥の激昂も止めなかった」
「……黙れ。殺すぞ」
「だから撃てるなら撃ってみろ。俺を殺してみろ」
陽一の、銃を握る手に力が入る。
けれど引き金に伸びた指は動かない。力が入らない。
「殺す気がないなら」刹那、陽一の手に痛みが走る。「銃なんか向けんな」
しかめて、その視界に映るのは蹴りを打ち抜く光二とはじき飛ばされた銃。
理解したのは、乾いた落下音が響いてからだった。
陽一は痛む左手を抱くようにして憎々しげに光二を睨む。
その双眸の目の前に銃口が現れた。
「銃はこうやって使うんだよ」



