「いや、あの御黒井君。言ってる意味がよくわからないよ」
「別に理解する必要はない。ただ拳銃を出せばいいだけだ」
でなければ。
光二は静かに自身の拳銃を吉井に向けた。
陽一には光二の真意がわからなかった。
いや、今に限った事ではない。数時間前も光二は間接的に遥を死に追いやった。
激しい憎悪が沸き立つが同時に困惑も頭を巡る。
光二の本心はどこにある?
読めない光二の行動。チェシャ猫の狂気に毒されたのか、それともこれが本質なのか。
憎悪と困惑はいつの間にか警戒に変わっていた。
「吉井さん、早く。じゃないと俺は君を殺す事になる」
「……御黒井君、質の悪い冗談だわ。私を殺したとして私は犯人じゃないから、あなたも死ぬ事になるわ」
「だから?」



