「ううん。一ノ瀬君がいなかったら、多分私は」
吉井はその先は打ち切ったように言葉を繋げず俯く。
おおかた、予想してしまったのだろう。自分のなぶられる様を。
「ま、なにはともあれ助かってなによりじゃん」
光二が吉井の肩に手を置く。
「うん。本当にありがとう、御黒井君も」
光二は屈託のない笑顔を見せて「どういたしまして」と返す。
「でさ、吉井さん」
「はい?」
光二の手が、肩から下りて吉井の胸の前に手のひらを仰臥(ぎょうが)させて、何かねだるよう差し出した。
「吉井さんの拳銃。出して」
「……はい?」
吉井は、それに陽一も光二の言ってる意味がわからなかった。
「はい?じゃなくてさ。拳銃を俺によこせって言ってんの」



