陽一は叫ぶ。


現実を否定するように、悪い夢を覚ますように。


しかし吐き出した声は、視覚を払拭することなく霧散した。


陽一はゆっくりと遥に近寄る。


うつ伏せに倒れ、今もまだ血をこめかみから流し床に朱を広げ続けている。


床に膝をつき、遥を仰向けにして抱き寄せる。


オレンジのライトの下、肩口まで伸びた髪の毛がサラリと流れた。


身近な人間が、死んだ。


ついさっきまで話していた友人が。


「好きだ」と言ってくれた女の子が。あっさりと。


死んだ。


撃たれて死んだ。


「うあぁあぁぁーーっ!!」


陽一は死体を抱き締め、獣のように慟哭する。


行き場のない怒りを悲しみを憎悪を絶望を、薄闇の室内に吐き散らす。