靴音が近づいてくるのにしたがってポツポツと明かりがついていく。


明かりと言ってもそれは地下道なんかにある申し訳程度の光で、むしろ闇を助長させてる感じがする。


もちろん、靴音の正体を浮かばせる程でもない。


靴音が消えた。


それから指を鳴らす音。それが合図だったのか視界に光が飛び込み闇が駆逐された。


眩しくて手で庇(ひさし)を作るが、闇に慣れきった目にはあまり効果はない。


「やぁ、はじめまして。茶屋 望美ちゃん」


誰だ?


眩む目を酷使して細めてみるが、そいつに見覚えはない。


けど、その特徴的な声。それはわかる。


「チェシャ、猫?」


「大当たり~」


段々と明かりに慣れてきた目はそいつの全体像を映していく。


ヘビみたいな男。と言うのが第一印象だった。