「所で、いつまでそんな不細工な猫気取ってるつもりぃ?」


電子のチェシャ猫はニヤニヤ笑いのまま、けれど無言を貫く。


不意にカシャリと音がした。


銃が向けられた?


身構え、天井や壁を注視するけど薄闇の中では視認出来ない。


『銃なんて向けてないよ。そんなに怖がるなんて、可愛いねぇ♪』


画面からチェシャ猫が消えた。


声に連なるように目の前の大画面が左右に割れ始める。


なるほどね。


どこにもないと思ってた入り口、それに出口は画面でカモフラージュしてた訳か。


まるで昔見た映画のワンシーンのように緩慢に出来上がっていく出入り口。


その先は、やはり深遠の暗闇が奥行きを隠している。


そのうちカツンカツンとわざとらしく鳴らされる靴音が聞こえてきた。