roulette・3

コトン…


ようやく、赤い玉は動きを止めて、ある場所に落ちた。


「出ましたね。では、あなたには…過去に戻っていただきます」



「過去?なんで?」


「赤い玉は、過去と書かれた場所に落ちました。あなたには、拭えないような消したい過去があるじゃないですか?」


確かに、過去という場所に落ちた赤い玉。


他に書かれている文字は、現在と未来。


「ちょっと、待って!確かに、私は過去に過ちを犯してる…拭えない過ちを。でも…」



鋭い目つきで反論しながら、私は謎の翁に言葉を放った。


しかし、


「あなたを試すと言いましたよね?あなたは、過去に戻ってもう一度、このルーレットを回してもらいます」



さっきからずっと変わらない微笑みで、感情のない言葉達が私に向かって容赦なく飛び交ってくる。


「嫌…今更、過去に…」


視線を逸らしてしまってる時点で、もう私の中で負けたような感じ。


「このルーレットは、あなたの心なんですよ。だから、過去に落ちた。では、過去に行っていただきます」



…パチン。


しなやかな指が音を上げると、一瞬に私の記憶は途絶えた。