幻想的な歌声に誘われるように私は立って歩き出した。 歌声のする方向へ向かって。 「わ…」 草むらをガサガサと分けていくとひらけた場所に出た。 目の前は湖。それほど大きくはない。 歌声はここから聞こえていた様子。 だけれど、近づくと足音に警戒したのか歌声はピッタリと止まってしまった。 私は湖を覗き込んだ。 ちっとも恐ろしくなくて (どんな方があの歌声の主なのかしら?) 一目見てみたい。