「こんなトコで歌っていいのかなぁー…。お客さん、いるよ?」


地元では大きめの商店街の中にあるこの楽器店。


しかし、今私たちが立っている場所はお店の入口付近だし、商店街を歩く買い物中の人にバッチリ聞かれてしまいそうだ。


「歌うなって書いてねぇし」


三国くんは私を見る事もなく、キーボードを叩き音を確かめている。


「すごーい。ピアノの音も出るんだね。あっ、ドラムの音も聞こえる~。

へぇ…すごーい!私もこれ欲しいな。そしたら家でも一人で練習できるよね!?」


「…フッ。じゃあ買えば?安くしとくぜ。


…さて、やりますか」


三国くんは笑って私をチラと見る。


トクン。


と波打つ私の鼓動。


三国くんの視線にドキッとしつつ、ここで歌う緊張感ともどっちともとれる胸の高鳴り。