VOICE【短編集】



黒いハットを被るその顔は影になってよく見えない。

……でも、どこかで見たことある……よう、な。

「……っ!?」

わかった。

声にならない声を上げた俺に気づいたのか、その歌い手は、こっちに目を向けた。

一瞬目を見開いた後、唇の端を上げてふわりと笑う。

「あ~!紅志だ!」





声の主。

イコール

あのバカ。

イコール

海斗。





驚きで俺は何も言えなかった。
ただ呆然と、海斗の歌う姿を見つめていた。