理想の声だった。 透き通ってるのに、グサリと胸を突き刺すような、少し掠れた低い声。 ゆっくり、やがて早足でその声に向かって俺は動いた。 逆行する人の波をかき分けて。 最初に見えたのは後ろ姿。 歌ってる曲は……。 「翼をください?」 しかもめちゃくちゃロックで。 今までに聴いたロックな《翼をください》のどれとも違う。 あぁ……弾きたい。 今すぐ、ここに、ギターがあれば! ウズウズする指を、拳を握って押さえつけ、その後ろ姿に近づいた。