「ごめん、ちょっと待ってて」
電話の向こうの彼へ声をかけてから、ケータイを手で覆う。それから女の方へ向き直った。
こちらが口を開く前に桜色の唇が動く。
「帰るから」
派手な見た目とは違い、か細い声が言葉を紡いだ。
それを聞いても昨日の記憶は戻ってこないみたいだ。
「そう。気を付けて」
自分でも思ったより冷たい声が出た。
一夜限りの相手に情が持てるほど優しくないから、仕方ない。
長い黒髪を揺らしながら、紺色のワンピースを着た女は笑うことも、昨夜の余韻を残す様子もなく、リビングを横切ってこちらへ向かってきた。
なに?
疑問に思った瞬間、ほっそりした腕が伸びて、手にしていた携帯電話を奪われていた。
「なっ!?」
呆気にとられてる俺の真ん前で、綺麗な唇が動く。そこから出た台詞はとんでもなくて。



