『なに?ヘコんでんの?アンタらしくもない』
予想以上に柔らかい声が聞こえてきて、ケータイを持ったままテーブルに突っ伏した。
優しくされるとつけあがるんだよ、お前は。
そう言うあの人の顔が呆れたように笑ったのが見えた気がして、自己嫌悪。
顔さえ似てりゃ、誰でもいいのか俺は。
『おーい、オッサン?聞いてる?』
途端に無言になった俺を訝しむような声に、ふと我に返る。
「ああ、ごめん。いや~、君に心配してもらえるなんて驚いちゃって。思わず感動しちゃったよ」
『……やっぱなんか無理してんだろ?いつもと声が違うけど』
なんで。
ぐ、と心臓が掴まれたように痛くなった。
なんでバレちゃうかなあ。
窓の外では、雨音がますます強くなる。思い出したくないシーンが頭をよぎる。何度も。
あの人は、今、何をしてるんだろうか?
艶やかな黒髪が視界の端をよぎって、はっとする。見れば先程までベッドで寝ていたはずの名前も覚えてない女が寝室のドアを開けて、こちらを見ていた。



