少々ムッとした莱の様子に、全く悪気もなさそうに諒介が笑った。
「ま、その気になったら教えてねん」
「ならねぇよ、絶対」
「うわ、キツいお言葉」
わざとらしく目を丸くしながら肩をすくめると、諒介はギターを担いで立ち上がった。そのまま屋上のドアに手をかける。
「じゃあまたね~、篠塚」
「もう誘わないでいいっすよ、ホント」
莱が迷惑そうに言葉を投げれば、いつも通りの台詞が返ってきた。
「また付き合ってねー」
「………」
ったく、自分勝手だ。
ふうっ、と溜め息を吐いた莱の顔には苦笑い。
「どうせまた明日同じこと言うんだよな……ったく」
それでも。と莱は思う。
あの人のギターの音色に自分の歌声を乗せるのは結構好きだ。
毎朝聞くあの台詞も。
「ちょっとそこまで」
《終わり》



