ユミ子ちゃんはうるんだ瞳で、空き部屋の方に目配せした。
土屋先輩の両親は忙しくてほとんど帰ってこないから、おかげでこの家はヤリ部屋だらけだ。
「ヒロくん。どーする?」
「……」
――『もしよければ、私の処女をもらってくれませんか?』
――『昔はマジ空手バカでさ~』
――『私、12月いっぱいで仙台に引っ越すんです』
ああぁあ~……頭が混乱する。
目の前にはヤれる女の子がいて、こんなおいしい状況なのに。
しっかりしろよ、俺。
一発屋の名が泣くぞ。
俺はユミ子ちゃんの手を握り返すと、空いてる部屋に入った。