アリスズ

×
 ウメのところに出入りしている行商人が、町の商人たちを連れて入ってくる。

 この道場に、居候している絵描きも来た。

 トーを描くという目的は達成したらしいが、居心地がいいのか、まだ居座っているようだ。

 絵描き──マリスは、絵の道具を持ちこんできている。

 この場で、結婚式の様子を絵に残す気か。

 トーが、現れた。

 当たり前のように入ってきて、当たり前のように男たちの間に紛れる。

 だが、その白い髪と特異な雰囲気は、紛れさせようがなかった。

 何というか。

 上から下まで、身分も肩書きも違う面子が大集合だ。

 東翼の御方や東翼長が、一般の民にまぎれているなど、成人の旅路以外ではあり得ないことだ。

 だが、それだけでは終わらなかった。

「やれ…面白いことをしているのを、私に知らせんとは」

 それは──まさに、震撼だった。

 東翼の御方でさえ、一瞬顔をこわばらせたほどだ。

 太陽が。

 イデアメリトスの太陽が、単身で現れたのだ。

「偉い人は、今日は呼ばれないんですよ」

 太陽の息子が、苦笑ぎみにそう伝えると。

「まったく、偉くなると余計な誘い以外こなくなる」

 どすん。

 太陽に真後ろに座られた兵士は、青ざめて動けないでいる。

 その隣にはトー。

 とんでもない光景だ。

 衝撃を、周囲の人間が吸収しきれていない中。

「さあさあ、花嫁さんが入るよ」

 シェローの母親が、固まりかけた空気を破壊しに現れる。

 その後から。

 真っ白な。

 全て、真っ白な布で作られた、異国の衣装で女が入ってくる。

 同じく、白いかぶりもののせいで、よく顔が見えない。

 だが。

 手を引いているのがウメで。

 その後から、ウメの子を抱いているエンチェルクが続くのだ。

「うちの自慢の布ですよ」

 自慢げに、商人が周囲に囁いている言葉など──ダイの耳には入っていなかった。