アリスズ

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 仰々しい式ではない。

 立会人も、別にいらない。

 場所なんて、キクの道場でもいい。

 ただの男と、ただの女の結婚式なのだ。

 素晴らしいものなど、何も必要ではなかった。

 ダイは、本当は挙げなくてもいいと思っていたのだ。

 だが、日本人でありたいという言葉を聞いた時、彼は決意してしまった。

 ひとつだけ。

 たったひとつだけ、二人が夫婦である証明を残したいと。

 思いつくものが、式しかなかった。

 それだけ。

「人前式でいいのね…では、私に取り仕切りを任せてもらえるかしら」

 だが。

 ウメは、そんなダイの目論見の隙間に、するりと入ってきた。

「少しだけ時間が欲しいわ。ひと月でもいいの…ひと月後の、20日の吉日でどうかしら」

 ウメの目は、とても輝いていて、やる気に満ち溢れていた。

 ダイに、それを止めることは出来ないと思えるほど。

「お手柔らかに」

 キクは、軽く肩をそびやかす。

 彼女もまた、自分の姉妹を止めるつもりはないようだ。

「エンチェルク…手伝ってもらえるかしら」

 キクの承諾に、更にウメは目を輝かせる。

「ええ、喜んで」

 女二人の間の温度が、妙に高くなり、話がどんどん進んでいく。

 当事者であるダイとキクは、すっかりカヤの外になっていた。

「ちょっと出るよ」

 盛り上がる二人に一声だけかけ、キクは彼に視線を向ける。

 居心地の悪い状態から、ダイを助けてくれたようだ。

 夕刻の内畑を横目に、どこへ行くともなしに二人で歩く。

「梅は、子を産むために、使えるものは何でも使ったからね」

 苦笑混じりに、キクが語る。

「式を取り仕切るっていうのは…まあ…多分…その礼なんだろうな」

 彼女の目が、自分を見る。

 トーに、文を送ったことを──知っているように思えた。