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ダイは、困っていた。
さっさと結婚したリサーが、今度はダイに結婚相手を世話しようとするのだ。
これまで、遠巻きに何度か貴族からの申し入れはあったのだが、幸い、さして強引ではなかった。
だが、リサーは違う。
本人も東翼長であるし、父親も府長という折り紙つきの上級貴族だ。
現時点の力関係で言えば、ダイに断る権利など最初からない。
ただ。
完全に、劣勢だったわけではない。
もし、申し出を断ったとしても、リサーがダイを失職させたり、左遷させたりは出来ない、ということだ。
彼は、よほどの不祥事を起こさない限り、現職から下がることはない。
いまのダイは。
あの御方の旅を、成功させたという栄誉に守られている。
それを全面的に良しと思っているわけではないが、ここにいる以上は、必要なのもまた確かだった。
「私の従姉妹の娘だ。親の身分で言えば、中級の貴族だ」
わざわざ、近衛隊長の執務室までやってきて、リサーは彼に縁談を突き出す。
中級の貴族の娘を嫁にもらえることなど、お前にとっては栄華なのだと言わんばかりだ。
「お前も、急がねばならんのだ」
そして、リサーの政治談議が始まる。
要するに。
二人の若宮の、脇を固める子が必要なのだと。
そのためには、それなりの身分の後ろ盾がいる。
お前は賢者になるが、貴族ではない。
お前の子に、身分が引き継がれることはない。
だから、貴族の妻が必要なのだ。
くどくどくどくどくどくど。
ダイの耳を、右から左へリサーの声が抜けて行く。
元々。
ダイは、何も持っていなかった。
そんな自分に、どうして彼はたくさんのものを持たせようとするのか。
既に、この地位だけでも大荷物だというのに。
ダイは、今日もまたリサーの説教を受け流す気だった。
なのに。
「まさか…お前まで、異国の女と子を成すわけではないだろうな?」
それは──釘だった。
大きな大きな釘。
ダイを、決してそっちの方向に行かせまいとする、リサーの強烈な一撃だった。
ダイは、困っていた。
さっさと結婚したリサーが、今度はダイに結婚相手を世話しようとするのだ。
これまで、遠巻きに何度か貴族からの申し入れはあったのだが、幸い、さして強引ではなかった。
だが、リサーは違う。
本人も東翼長であるし、父親も府長という折り紙つきの上級貴族だ。
現時点の力関係で言えば、ダイに断る権利など最初からない。
ただ。
完全に、劣勢だったわけではない。
もし、申し出を断ったとしても、リサーがダイを失職させたり、左遷させたりは出来ない、ということだ。
彼は、よほどの不祥事を起こさない限り、現職から下がることはない。
いまのダイは。
あの御方の旅を、成功させたという栄誉に守られている。
それを全面的に良しと思っているわけではないが、ここにいる以上は、必要なのもまた確かだった。
「私の従姉妹の娘だ。親の身分で言えば、中級の貴族だ」
わざわざ、近衛隊長の執務室までやってきて、リサーは彼に縁談を突き出す。
中級の貴族の娘を嫁にもらえることなど、お前にとっては栄華なのだと言わんばかりだ。
「お前も、急がねばならんのだ」
そして、リサーの政治談議が始まる。
要するに。
二人の若宮の、脇を固める子が必要なのだと。
そのためには、それなりの身分の後ろ盾がいる。
お前は賢者になるが、貴族ではない。
お前の子に、身分が引き継がれることはない。
だから、貴族の妻が必要なのだ。
くどくどくどくどくどくど。
ダイの耳を、右から左へリサーの声が抜けて行く。
元々。
ダイは、何も持っていなかった。
そんな自分に、どうして彼はたくさんのものを持たせようとするのか。
既に、この地位だけでも大荷物だというのに。
ダイは、今日もまたリサーの説教を受け流す気だった。
なのに。
「まさか…お前まで、異国の女と子を成すわけではないだろうな?」
それは──釘だった。
大きな大きな釘。
ダイを、決してそっちの方向に行かせまいとする、リサーの強烈な一撃だった。


