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幸せの歌が、聞こえる。
アルテンは、浮き上がらない心のまま、その歌を聞きながら歩いていた。
宮殿の正門前は、多くの一般市民が婚姻の儀を祝うべく入れ替わり立ち替わり詣でているため、貴族でさえ近づけない状態だ。
そのため、名のある貴族たちのほとんどは、前日から宮殿に詰めている。
他の手段として、市民が近付く事の出来ない東門から、出入りすることは出来た。
多くの貴族は、正門にこだわるため、副門のこちらから入りたがらないだけだ。
アルテンは、東門に向かっていた。
自分が都に来ている間に、次代太陽の婚姻の儀に立ち会えるとは、運のよいことだ。
だが、気分は晴れない。
「これは、テイタッドレック卿の…」
聞き覚えのある呼ばれ方に、アルテンは足を止めた。
警備の兵士のいる通りに、入る直前のことだ。
振り返ると、父御用達の行商人がいた。
梅とも関わりの深い者だ。
髪を隠すように縛りつけられた布の下を、アルテンは知っている。
昔、取るように命じたのだ。
アルテン自身が。
ずっとずっと前の、未熟すぎる時代の話だった。
「宮殿に入られるのであれば、これを…彼女にお渡し願えませんでしょうか」
差し出されたのは、厚い封。
ここにもまた、ウメに会いたくても会えない者がいる。
彼は、ただの行商人で。
とても宮殿には、入れないのだ。
そして、いま。
ウメは、宮殿から出られない状態だった。
婚姻の儀の日だというのに、アルテンの目的は、ウメに会うことだ。
だが、本当の意味で会えないことを知っていた。
彼女は、もう何日も眠り続けているのだ。
イデアメリトスの魔法を持ってしても、ウメは目覚めなかった。
「会えるか分からないが…預かろう」
中は、紙の束のようだ。
ずしりと重かった。
「血を流す準備が出来ました…そうお伝え下さい」
行商人は、物騒なことを言いながらも、微かに笑みの唇になる。
何かを、待ち望んでいる風に見えた。
ウメは、いま──言いかけた言葉が怖いものに思え、アルテンはそのまま口を閉ざしたのだった。
幸せの歌が、聞こえる。
アルテンは、浮き上がらない心のまま、その歌を聞きながら歩いていた。
宮殿の正門前は、多くの一般市民が婚姻の儀を祝うべく入れ替わり立ち替わり詣でているため、貴族でさえ近づけない状態だ。
そのため、名のある貴族たちのほとんどは、前日から宮殿に詰めている。
他の手段として、市民が近付く事の出来ない東門から、出入りすることは出来た。
多くの貴族は、正門にこだわるため、副門のこちらから入りたがらないだけだ。
アルテンは、東門に向かっていた。
自分が都に来ている間に、次代太陽の婚姻の儀に立ち会えるとは、運のよいことだ。
だが、気分は晴れない。
「これは、テイタッドレック卿の…」
聞き覚えのある呼ばれ方に、アルテンは足を止めた。
警備の兵士のいる通りに、入る直前のことだ。
振り返ると、父御用達の行商人がいた。
梅とも関わりの深い者だ。
髪を隠すように縛りつけられた布の下を、アルテンは知っている。
昔、取るように命じたのだ。
アルテン自身が。
ずっとずっと前の、未熟すぎる時代の話だった。
「宮殿に入られるのであれば、これを…彼女にお渡し願えませんでしょうか」
差し出されたのは、厚い封。
ここにもまた、ウメに会いたくても会えない者がいる。
彼は、ただの行商人で。
とても宮殿には、入れないのだ。
そして、いま。
ウメは、宮殿から出られない状態だった。
婚姻の儀の日だというのに、アルテンの目的は、ウメに会うことだ。
だが、本当の意味で会えないことを知っていた。
彼女は、もう何日も眠り続けているのだ。
イデアメリトスの魔法を持ってしても、ウメは目覚めなかった。
「会えるか分からないが…預かろう」
中は、紙の束のようだ。
ずしりと重かった。
「血を流す準備が出来ました…そうお伝え下さい」
行商人は、物騒なことを言いながらも、微かに笑みの唇になる。
何かを、待ち望んでいる風に見えた。
ウメは、いま──言いかけた言葉が怖いものに思え、アルテンはそのまま口を閉ざしたのだった。


