☆
「元気そうだね、ケイコ」
人払いされたアディマの部屋。
ロジューに、部屋まで送ってもらったのだ。
『年下に偉くなられると、腹が立つものだな』
彼女は、とても分かりやすい理由で立腹していた。
これまで彼女より偉いのは、君主である兄だけだったのだろう。
既にアディマは、正式な世継ぎとして認められたという。
そうなると、順序的に君主、アディマ、ロジューということになるらしい。
だから、アディマの頼みを断れない──というのは、建前だろう。
景子を送ることもきっと、心底嫌なことではないのでやってくれたのだ。
「アディマも元気そう…ね?」
近づいてくるアディマが、優しく彼女を抱き寄せる。
景子の言葉が、疑問形になったのは、そんな彼の行動に思うところがあったからではない。
彼女を抱きしめながらも、何か気になることがあるような様子だったのだ。
「大丈夫?」
胸元に埋めていた顔を、真上に持ち上げて彼を見上げる。
光はいつも通りなので、体調が悪いというわけではなさそうだ。
「大丈夫だよ…ケイコ」
もう一度、ぎゅっとされる。
上の空ではない。
腕の中で、彼女の形を確かめるように抱きしめるアディマは、他にも考えなければならないことがたくさんあるのだ。
この国を、継がなければならないのだから。
「ケイコ…今日は、このままこの部屋にいておくれ。普段、一緒にいられないのだから、ゆっくり話をしよう」
それでも。
彼は、その貴重な時間を、景子と共に過ごそうと願ってくれるのだ。
彼女もまた、アディマの身体をぎゅうっと抱き返した。
話したいことは、たくさんたくさんあった。
一晩では、到底足りないほど。
大半は、彼にとっては取るに足らないことだろう。
それでも、アディマの心が少しでも晴れるなら、景子はそうしたいと思ったのだ。
「元気そうだね、ケイコ」
人払いされたアディマの部屋。
ロジューに、部屋まで送ってもらったのだ。
『年下に偉くなられると、腹が立つものだな』
彼女は、とても分かりやすい理由で立腹していた。
これまで彼女より偉いのは、君主である兄だけだったのだろう。
既にアディマは、正式な世継ぎとして認められたという。
そうなると、順序的に君主、アディマ、ロジューということになるらしい。
だから、アディマの頼みを断れない──というのは、建前だろう。
景子を送ることもきっと、心底嫌なことではないのでやってくれたのだ。
「アディマも元気そう…ね?」
近づいてくるアディマが、優しく彼女を抱き寄せる。
景子の言葉が、疑問形になったのは、そんな彼の行動に思うところがあったからではない。
彼女を抱きしめながらも、何か気になることがあるような様子だったのだ。
「大丈夫?」
胸元に埋めていた顔を、真上に持ち上げて彼を見上げる。
光はいつも通りなので、体調が悪いというわけではなさそうだ。
「大丈夫だよ…ケイコ」
もう一度、ぎゅっとされる。
上の空ではない。
腕の中で、彼女の形を確かめるように抱きしめるアディマは、他にも考えなければならないことがたくさんあるのだ。
この国を、継がなければならないのだから。
「ケイコ…今日は、このままこの部屋にいておくれ。普段、一緒にいられないのだから、ゆっくり話をしよう」
それでも。
彼は、その貴重な時間を、景子と共に過ごそうと願ってくれるのだ。
彼女もまた、アディマの身体をぎゅうっと抱き返した。
話したいことは、たくさんたくさんあった。
一晩では、到底足りないほど。
大半は、彼にとっては取るに足らないことだろう。
それでも、アディマの心が少しでも晴れるなら、景子はそうしたいと思ったのだ。


