☆
到着した家は、いかにも中堅貴族の屋敷だった。
現れたのはうら若い女性。
しかし、彼女は景子やネイディが農林府の役人であることを確認し、使用人によって運び込まれる室長を見た後、つまらなそうにどこかへ消えてしまったのだ。
最初に現れたということは、この屋敷の名代を預かる立場だろうに。
「室長は、長男じゃないんだよ」
景子が怪訝な顔をしていると、ネイディが小さくぼそりと補足してくれた。
ああ、そうか。
長男以外、貴族の名を継げないのだ。
この様子を見れば、彼は兄の屋敷に、居候という形を取っているのだろう。
「既に、父親も母親もいらっしゃらないからね、室長は。生きていれば、次男にも屋敷のひとつくらい与えたんだろうけど」
ネイディは、貴族名鑑でも持っているのではないかと思えるほど、妙な知識がある。
ロジューを、日向花の名で呼んだこともあったし。
「お医者様、呼んでもらえるのかな」
景子は、さっきの若い女性の態度を思い出して、心配になった。
少なくとも、夫が帰ってくるまでは放置しそうな気がする。
「さあね…でも、もう僕たちが関与するところじゃ…って、おい」
ネイディは、驚いた声をあげた。
景子は、運び込まれる室長の後に、ついていこうとしたのだ。
あの光は、本当によくない光のはず。
景子は、自分を信じようと思った。
自分のこの、見るしか出来ない目を、ちゃんと理解しようと思ったのだ。
寝ていれば治るレベルは、とうに越えている。
頭を冷やすことだけでも、やらなければ。
「すみません、お水と冷やすための布と…」
ベッドに寝かされる室長を見届けた後、立ち去ろうとする使用人たちに頼みごとをする。
「まったく…知らないぞ」
扉のところで、ネイディが唸った。
彼女のことを、いろいろ気にかけてくれるいい人だ。
なんだかんだいいながら、こうして付き合ってくれるのだから。
男手が増えたことに、彼女は喜んだのだ。
「ああ、よかった。ネイディ、室長を着替えさせてあげて」
そして──にっこり笑ってお願いごとをするのだった。
到着した家は、いかにも中堅貴族の屋敷だった。
現れたのはうら若い女性。
しかし、彼女は景子やネイディが農林府の役人であることを確認し、使用人によって運び込まれる室長を見た後、つまらなそうにどこかへ消えてしまったのだ。
最初に現れたということは、この屋敷の名代を預かる立場だろうに。
「室長は、長男じゃないんだよ」
景子が怪訝な顔をしていると、ネイディが小さくぼそりと補足してくれた。
ああ、そうか。
長男以外、貴族の名を継げないのだ。
この様子を見れば、彼は兄の屋敷に、居候という形を取っているのだろう。
「既に、父親も母親もいらっしゃらないからね、室長は。生きていれば、次男にも屋敷のひとつくらい与えたんだろうけど」
ネイディは、貴族名鑑でも持っているのではないかと思えるほど、妙な知識がある。
ロジューを、日向花の名で呼んだこともあったし。
「お医者様、呼んでもらえるのかな」
景子は、さっきの若い女性の態度を思い出して、心配になった。
少なくとも、夫が帰ってくるまでは放置しそうな気がする。
「さあね…でも、もう僕たちが関与するところじゃ…って、おい」
ネイディは、驚いた声をあげた。
景子は、運び込まれる室長の後に、ついていこうとしたのだ。
あの光は、本当によくない光のはず。
景子は、自分を信じようと思った。
自分のこの、見るしか出来ない目を、ちゃんと理解しようと思ったのだ。
寝ていれば治るレベルは、とうに越えている。
頭を冷やすことだけでも、やらなければ。
「すみません、お水と冷やすための布と…」
ベッドに寝かされる室長を見届けた後、立ち去ろうとする使用人たちに頼みごとをする。
「まったく…知らないぞ」
扉のところで、ネイディが唸った。
彼女のことを、いろいろ気にかけてくれるいい人だ。
なんだかんだいいながら、こうして付き合ってくれるのだから。
男手が増えたことに、彼女は喜んだのだ。
「ああ、よかった。ネイディ、室長を着替えさせてあげて」
そして──にっこり笑ってお願いごとをするのだった。


