☆
「室長…具合悪そうなんだけど」
ついに我慢が出来なくなって、景子はネイディに話を振ってみた。
「え?」
彼は驚いたように、上司の方を見る。
しばらく、じーっと見ていた後、景子の方を向き直り。
「そうかぁ?」
ネイディには、いつもと同じ上司に見えるのだろう。
顔色が悪いのは、今日に始まったことではないのだから。
さっきよりも、光がはぜては消える回数が増えてきているように思えて、景子はどきどきした。
光が完全に消えるのは、すなわち命が終わってしまうことではないか、と。
彼女は、そーっと席を立った。
「お…おい!」
小さく小さく殺した声で、ネイディは景子を止めようとする。
けれども、彼女はこそこそと上司のところまで近づいたのだ。
「失礼しまーす…」
小さい小さい声で、景子は後ろから彼に声をかけた。
気づいていないようで、室長はまったく反応しない。
彼女は、そーっと手を伸ばした。
その部屋の空気が、一瞬だけ完全に止まった。
ネイディを含む職員皆が、景子の行動に驚いたのだ。
彼女は、座って仕事をする室長の後ろから手を伸ばし──その額にいきなり触ったのである。
ジュウッ!
勿論、そんな音はしなかった。
しかし、驚くほど高い熱なのは間違いなかった。
「何をしているのかね」
熱とは真反対の冷たい上司の声が、響き渡る。
「だ、誰か室長を家に送ってあげて!」
景子は、彼の意見など聞いていなかった。
このままでは、職場で昇天しかねないと思ったのだ。
しかし。
彼女の声に、誰一人動こうとしない。
室長がいつもの態度を続けている限り、景子の言葉には信憑性がないのだろう。
「あなたは病気です! 高熱です! 死にかけてます! 違うというのなら椅子から立ってみてください!」
ああもう。
どうしてこう、男は仕事が絡むと頑固なのか。
景子の記憶の中に、つらいものがよみがえった。
OL時代、景子は過労死に直面したことがあったのだ。
その時も、上司で。
異変に気付いていながら──彼女は、止められなかった。
「室長…具合悪そうなんだけど」
ついに我慢が出来なくなって、景子はネイディに話を振ってみた。
「え?」
彼は驚いたように、上司の方を見る。
しばらく、じーっと見ていた後、景子の方を向き直り。
「そうかぁ?」
ネイディには、いつもと同じ上司に見えるのだろう。
顔色が悪いのは、今日に始まったことではないのだから。
さっきよりも、光がはぜては消える回数が増えてきているように思えて、景子はどきどきした。
光が完全に消えるのは、すなわち命が終わってしまうことではないか、と。
彼女は、そーっと席を立った。
「お…おい!」
小さく小さく殺した声で、ネイディは景子を止めようとする。
けれども、彼女はこそこそと上司のところまで近づいたのだ。
「失礼しまーす…」
小さい小さい声で、景子は後ろから彼に声をかけた。
気づいていないようで、室長はまったく反応しない。
彼女は、そーっと手を伸ばした。
その部屋の空気が、一瞬だけ完全に止まった。
ネイディを含む職員皆が、景子の行動に驚いたのだ。
彼女は、座って仕事をする室長の後ろから手を伸ばし──その額にいきなり触ったのである。
ジュウッ!
勿論、そんな音はしなかった。
しかし、驚くほど高い熱なのは間違いなかった。
「何をしているのかね」
熱とは真反対の冷たい上司の声が、響き渡る。
「だ、誰か室長を家に送ってあげて!」
景子は、彼の意見など聞いていなかった。
このままでは、職場で昇天しかねないと思ったのだ。
しかし。
彼女の声に、誰一人動こうとしない。
室長がいつもの態度を続けている限り、景子の言葉には信憑性がないのだろう。
「あなたは病気です! 高熱です! 死にかけてます! 違うというのなら椅子から立ってみてください!」
ああもう。
どうしてこう、男は仕事が絡むと頑固なのか。
景子の記憶の中に、つらいものがよみがえった。
OL時代、景子は過労死に直面したことがあったのだ。
その時も、上司で。
異変に気付いていながら──彼女は、止められなかった。


