アリスズ


 太陽が、高い位置にある間に。

 あうう。

 景子は、再びアディマの部屋へとやってきていた。

 彼が、それを望んだのだ。

 東翼は、完全に人の気配を失っている。

 人払いされてしまっていた。

『愚甥も、お前を正式な妻と同じ扱いをする気だな』

 浴室の中で、ロジューはそう言っていた。

 身を清め、日の高い内に夫の部屋に入る。

 そしてまだ、太陽がある間に契りを交わすのが、昔からのならわし、というのだ。

 日の、高い内に。

 その言葉に、景子はがっくりとうなだれていた。

 夜の暗い中ならば、この貧相な身体も隠せるだろう。

 しかし、こんなに明るい太陽のある時間帯では、何も隠せないではないか。

 それ以前に。

 アディマは、暗い中でも問題なく歩ける人だった。

 おそらく、相当夜目が効くのだろう。

 そんな相手では、どうあってもこの貧相さは隠せないのだ。

 今さらながらに、自分の身体のことをロジューに再認識させられ、景子は彼の部屋の前で戸惑っていた。

 なのに。

 扉が、開く。

 綺麗に身を整えた、アディマがそこにはいた。

 景子が一人でじたばたしているのに、気づいていたのだ。

「ケイコ…大丈夫か?」

 そうして。

 優しく聞いてくれる。

 その声には、しかし優しさ以外のものも含まれていた。

 心配や不安、に近い色。

 彼もまた、ケイコが直前でまわれ右して帰ってしまうのではないか──そう恐れたのかもしれない。

「あ…あの…」

 カァっと、全身に恥ずかしさが巡る。

 リスクとかリターンとか、そういうことを考えていた時に消えていた恥ずかしさが、一気に彼女の中に舞い戻ってきたのだ。

「中に…入らないか?」

 そのまま、自分の体温で煮え死んでしまいそうな景子を、彼はさっきと同じ声で促した。

 早く、入って欲しい。

 アディマが、そう願っている。

「あ、うん…じゃない…はい」

 何を言っているのか、自分でも分からなくなってきた。