☆
叔母と甥って──結婚出来るんだ。
だらだらと、景子はいやな汗をかき続けた。
そういえば、彼女のいた世界でも、血族のどこまでが結婚対象であるかは、国によって違う。
日本だって大昔の話だが、すごい身内結婚をしていた時代があるではないか。
小うるさい姪のカナルディを部屋から放り出して、ロジューはソファへと戻って来る。
「どうにも、年の合う血の近い者が少ないようでな…私が子を作らなかったせいもあるが」
よっと。
向かいのソファに座りながら、彼女は視線をこちらに向けた。
景子は、自分がこわばったままの顔で止まっていることに気づいていたが、だからといって戻せるものでもない。
顔の筋肉が、言うことを聞かないのだ。
「髪を伸ばせぬ者は、イデアメリトスとは言え、老いるのが早いからな。いっそ、髪の長い未婚の私を嫁にして、血の濃い子供をぽろぽろ産ませようとでも思っているのだろう」
そんな彼女を楽しむように、ロジューの言葉はだんだん意地悪さを帯びてくる。
「だが、それで分かったぞ」
彼女は、その意地悪さをすぅっと引っ込めた。
「要するに…私が、あの甥の妃になるのは許せない…そう考えているイデアメリトスがいるってことだ」
随分、やり方が荒っぽいがな。
ということは。
他の、お嫁さん候補が怪しいってこと?
ロジューが第一ということは、他に第二、第三の候補がいるということである。
「第二候補が、7歳。第三候補が5歳…しかしまあ、あの甥のこれからの時間を考えれば、楽に待てるからな」
昔の殿さまの政略結婚などでも、そんな年齢差は当たり前だったではないか、と自分に言い聞かせる。
しかし、ロジューがアディマの嫁になることについて、承諾するとはとても思えなかった。
イデアメリトスの男と結婚するのはまっぴらだと言って、ここまで独身できた女性である。
「とりあえず…」
景子の思考をよそに、ロジューが話を続けた。
「とりあえず…第一妃候補は、辞退してこなかったがな」
だが。
彼女の答えは、景子の予想など遥か彼方にぶっとばしていた。
叔母と甥って──結婚出来るんだ。
だらだらと、景子はいやな汗をかき続けた。
そういえば、彼女のいた世界でも、血族のどこまでが結婚対象であるかは、国によって違う。
日本だって大昔の話だが、すごい身内結婚をしていた時代があるではないか。
小うるさい姪のカナルディを部屋から放り出して、ロジューはソファへと戻って来る。
「どうにも、年の合う血の近い者が少ないようでな…私が子を作らなかったせいもあるが」
よっと。
向かいのソファに座りながら、彼女は視線をこちらに向けた。
景子は、自分がこわばったままの顔で止まっていることに気づいていたが、だからといって戻せるものでもない。
顔の筋肉が、言うことを聞かないのだ。
「髪を伸ばせぬ者は、イデアメリトスとは言え、老いるのが早いからな。いっそ、髪の長い未婚の私を嫁にして、血の濃い子供をぽろぽろ産ませようとでも思っているのだろう」
そんな彼女を楽しむように、ロジューの言葉はだんだん意地悪さを帯びてくる。
「だが、それで分かったぞ」
彼女は、その意地悪さをすぅっと引っ込めた。
「要するに…私が、あの甥の妃になるのは許せない…そう考えているイデアメリトスがいるってことだ」
随分、やり方が荒っぽいがな。
ということは。
他の、お嫁さん候補が怪しいってこと?
ロジューが第一ということは、他に第二、第三の候補がいるということである。
「第二候補が、7歳。第三候補が5歳…しかしまあ、あの甥のこれからの時間を考えれば、楽に待てるからな」
昔の殿さまの政略結婚などでも、そんな年齢差は当たり前だったではないか、と自分に言い聞かせる。
しかし、ロジューがアディマの嫁になることについて、承諾するとはとても思えなかった。
イデアメリトスの男と結婚するのはまっぴらだと言って、ここまで独身できた女性である。
「とりあえず…」
景子の思考をよそに、ロジューが話を続けた。
「とりあえず…第一妃候補は、辞退してこなかったがな」
だが。
彼女の答えは、景子の予想など遥か彼方にぶっとばしていた。


