☆
やばい。
景子は、初めてその事実に気づいた。
男に案内された部屋は、数人の男がいた。
いや、男はいい。
そんなことよりも、大量の書類や本が、部屋の中にはあったのだ。
やばいと思ってもしょうがない。
何しろ。
景子は。
字が書けないのだ。
当然──読めもしない。
自分の名前ひとつ、この国の文字に表せないのである。
ガーン。
その衝撃たるや、自分でも驚くほどだった。
そんな人間が、どうやって役所で働けるというのか。
もっと早く、気づいておくべきだった。
「ケイコ・ヨシイ・ハナヤ…で、間違いないか?」
青ざめた男に問われて、こくこくと頷く。
書類を作るということで、正式な名前をリサーに聞かれた。
ケイコ・ヨシイだけでは、この国では名前が成立しないと言われ、しょうがなく後ろに花屋とつけたのだ。
それでも、この国の人間の半分以下の名前の長さらしいが。
「外回りに出せと言われている…内畑と外畑と農林府の畑の見回りでも行ってもらおう」
しかし、景子の特性は先に届いているのか、内勤を申し付けられることはなかった。
本当によかった。
「はい、畑の場所はどこですか?」
笑顔で問い返すと、男はますますしかめっつらに磨きがかかる。
「…ネイディランフルル君…ひととおり、畑の場所を案内してやってくれないか」
そして、奥にいる若い男に声をかけるのだ。
「はい…わかりました…」
下っ端扱いされているようで、しぶしぶ了解して席から立ち上がった。
「でも、全畑の場所を説明してたら…一日終わりますよ」
自分の机に積み上げられた書類を、彼はうんざりしたように見つめる。
「それが、どうかしたかね?」
そんなことは、青い顔の男には関係ないことのようだった。
やばい。
景子は、初めてその事実に気づいた。
男に案内された部屋は、数人の男がいた。
いや、男はいい。
そんなことよりも、大量の書類や本が、部屋の中にはあったのだ。
やばいと思ってもしょうがない。
何しろ。
景子は。
字が書けないのだ。
当然──読めもしない。
自分の名前ひとつ、この国の文字に表せないのである。
ガーン。
その衝撃たるや、自分でも驚くほどだった。
そんな人間が、どうやって役所で働けるというのか。
もっと早く、気づいておくべきだった。
「ケイコ・ヨシイ・ハナヤ…で、間違いないか?」
青ざめた男に問われて、こくこくと頷く。
書類を作るということで、正式な名前をリサーに聞かれた。
ケイコ・ヨシイだけでは、この国では名前が成立しないと言われ、しょうがなく後ろに花屋とつけたのだ。
それでも、この国の人間の半分以下の名前の長さらしいが。
「外回りに出せと言われている…内畑と外畑と農林府の畑の見回りでも行ってもらおう」
しかし、景子の特性は先に届いているのか、内勤を申し付けられることはなかった。
本当によかった。
「はい、畑の場所はどこですか?」
笑顔で問い返すと、男はますますしかめっつらに磨きがかかる。
「…ネイディランフルル君…ひととおり、畑の場所を案内してやってくれないか」
そして、奥にいる若い男に声をかけるのだ。
「はい…わかりました…」
下っ端扱いされているようで、しぶしぶ了解して席から立ち上がった。
「でも、全畑の場所を説明してたら…一日終わりますよ」
自分の机に積み上げられた書類を、彼はうんざりしたように見つめる。
「それが、どうかしたかね?」
そんなことは、青い顔の男には関係ないことのようだった。


