☆
農林府。
その建物とやらの前で、ボルポッサム爺は景子を置き去りにした。
彼の仕事は、あくまでも道案内ということだけだ。
この役所へ入れるのは、景子一人。
そして、帰りは自力で帰ってこなければならないと言われていたので、必死で道のりを覚えようとした。
自信ないなあ。
ただ、彼女を置いてくれた人は、この農林府の役人ということで、帰り道が分からなくなったら、仕事場で聞けば教えてもらえるだろうと言われ、少し心が軽くなる。
まずは、中に入らなければ。
門と同じ石材で出来ている建物に、足を踏み入れる。
「ええと…」
入口にいたのは、刀を帯びた男。
入ってきた景子に、ぎろりと視線を向ける。
「ブエルタリアメリー卿の紹介で来たんですが…」
不審人物と認定されたら、たたっきられそうだったので、慌てて景子は自分の後見の名前を口にした。
卿と呼ばれるのは、貴族の直系の、家督を継いだ者のみ。
それ以外は、よほど大きな功績があり、認められた場合を除いてない。
この場合、ブエルタリアメリー卿とは、リサーの父親にあたる。
だから、リサーやリサーの叔父の尊称は、現時点では『様』ということになるわけだ。
難しいしきたりを、彼は道中で景子に叩きこんだのである。
全部覚えられるはずなどないが、とりあえず恥をかかない程度の知識は、身につけさせられていた。
「…卿の? しばし待たれよ」
名前の威力は、絶大だった。
その尊称を聞くなり、番犬の男は奥へとすっ飛んでいったのだから。
そして、この太陽の照りつける地域においては、驚くほど青い顔のやせた男を連れて戻ってきたのだ。
顔色を別とすれば、二の腕に結ばれた、緑と黄色のスカーフが印象的である。
「ああ、君が…話は聞いている」
男は、しかめっつらで景子を見た。
うわぁ。
いかにも、建物の中から出ないと誓ったような肌の男に、景子は軽く汗を浮かべる。
外に飛び出す彼女とは、あきらかに真反対に思える。
うまくやっていけるかなあ。
それが、とても心配になったのだった。
農林府。
その建物とやらの前で、ボルポッサム爺は景子を置き去りにした。
彼の仕事は、あくまでも道案内ということだけだ。
この役所へ入れるのは、景子一人。
そして、帰りは自力で帰ってこなければならないと言われていたので、必死で道のりを覚えようとした。
自信ないなあ。
ただ、彼女を置いてくれた人は、この農林府の役人ということで、帰り道が分からなくなったら、仕事場で聞けば教えてもらえるだろうと言われ、少し心が軽くなる。
まずは、中に入らなければ。
門と同じ石材で出来ている建物に、足を踏み入れる。
「ええと…」
入口にいたのは、刀を帯びた男。
入ってきた景子に、ぎろりと視線を向ける。
「ブエルタリアメリー卿の紹介で来たんですが…」
不審人物と認定されたら、たたっきられそうだったので、慌てて景子は自分の後見の名前を口にした。
卿と呼ばれるのは、貴族の直系の、家督を継いだ者のみ。
それ以外は、よほど大きな功績があり、認められた場合を除いてない。
この場合、ブエルタリアメリー卿とは、リサーの父親にあたる。
だから、リサーやリサーの叔父の尊称は、現時点では『様』ということになるわけだ。
難しいしきたりを、彼は道中で景子に叩きこんだのである。
全部覚えられるはずなどないが、とりあえず恥をかかない程度の知識は、身につけさせられていた。
「…卿の? しばし待たれよ」
名前の威力は、絶大だった。
その尊称を聞くなり、番犬の男は奥へとすっ飛んでいったのだから。
そして、この太陽の照りつける地域においては、驚くほど青い顔のやせた男を連れて戻ってきたのだ。
顔色を別とすれば、二の腕に結ばれた、緑と黄色のスカーフが印象的である。
「ああ、君が…話は聞いている」
男は、しかめっつらで景子を見た。
うわぁ。
いかにも、建物の中から出ないと誓ったような肌の男に、景子は軽く汗を浮かべる。
外に飛び出す彼女とは、あきらかに真反対に思える。
うまくやっていけるかなあ。
それが、とても心配になったのだった。


