アリスズ


 朝!

 景子は、薄暗い最中、目を覚まして飛び起きた。

 着替えを済ませ、そーっと庭に出る。

 初夏の地域は朝が格別だと、旅の途中で知ったのだ。

 んーっと大きく伸びをして、白々と明け始める空と、目覚めようとしている植物の光を見る。

 蕾を開こうとしている花を見つけ、その前に張り込んだ。

 朝顔と姿は違うが、同じ要領で咲くようである。

 その花が開き始めると同時に、使用人たちも起き始めた音がする。

 まるで、仕事を始める合図のような花だ。

 最初に庭に出てきた男に、ぎょっとされた。

 昨日、彼女を部屋に案内してくれた人だ。

「おはようございます」

「月の化け物が出たかと思ったじゃねぇか…暗い内にあんまり外に出ない方がいいって、お前はおっかさんに習ってねぇのか?」

 ああ、そうか。

 男の言葉に、景子は納得した。

 景子の世界とは違う迷信が、こっちにはあるのだ。

 特に月については、よくないものばかりのようで。

 ここは中暑季地帯だから、元々日照時間は長い。

 その分、短い夜は余り出歩いてはいけないようだ。

 彼女は、夜におびえることは少ない。

 夜と言えども、景子にとっては明るい世界なのだから。

 それに、ダイが守ってくれて、アディマも他の二人もいて。

 恵まれた夜が多かったのだ。

「さあさあ、厨房に行って、朝飯と持っていく昼飯をもらってこい。早めに行かないと、他の連中に食われっちまうぞ」

 急かされて、それは大変と景子は屋敷へと戻り始めた。

 男も、一緒に後ろからついてくる。

 厨房は──すでに、使用人が集まっていた。

 女が3人、男が3人。

 後ろの男を入れると、合計7人か。

「何だ、ボルポッサム爺の新しい女かい?」

 アディマと同じ肌の色の男が、ひやかすように声を上げた。

 まるで、学校の転校生のような扱いだな、と感じる一瞬。

「景子です、どうぞよろしく」

 挨拶をすると、皆が少し奇妙な表情をした。

 おばさんが、言った。

「短い名前だねぇ…」

 まことに、そのとおりでございます。

 景子は、苦笑するしかなかった。