☆
「わぁ」
景子は、案内された部屋に歓声をあげた。
そこは、見事な使用人部屋だったのだ。
やったぁ。
ようやく、身分相応の部屋を得た事実に、景子は本当に喜んだのである。
変な話だが、いままで待遇が良すぎて、本当に落ち着かないことが多かったのだ。
ベッドとテーブルと椅子、服をしまう古びた家具と燭台。
それだけしかないが、十分だった。
窓を開けると、庭の隅が見える。
しかし──暑い。
都に近づくにつれ、分かってはいたことだが、初夏ほどの暑さだ。
中暑季地帯、というところに都はあるという。
日本で言えば、6~7月くらいの温度だろうか。
1年中こんな暑さの中を人は生きているので、町の人の半分ほどはアディマのような肌をしていた。
残りの半分も、どうしても日焼けの洗礼からは逃れられないようだったが。
うう、もう結構焼けたなぁ。
自分の両の手の甲を見ながら、景子は笑った。
しかし、周囲の人がみないい肌の色をしているのだから、日本の感覚で恥ずかしがる必要はないように思える。
シミという恐ろしい敵については、もはや考えないことにするしかない。
「明日、農林府に連れて行くことになるんだが…大丈夫かのう? あんたみたいなおじょうちゃんに、役人が勤まるかぁ?」
案内してくれた初老の男が、うーんと部屋の入口で唸った。
窓の外に目を奪われていた景子は、はっと振り返る。
そんな相手に、にっこりしてこう言った。
「32です」
「へ?」
「32歳です、私」
日本は、もう秋になっただろうか。
だとしたら、景子には誕生日が来ているはず。
だから、1つ年を足したのだ。
一生、31歳と言っているのは詐欺だろうから。
アディマに白状して以来、景子にとって歳の話はウィークポイントではなくなっていたのだ。
「32……」
とても信じられん──男の顔には、そう書いてあった。
「わぁ」
景子は、案内された部屋に歓声をあげた。
そこは、見事な使用人部屋だったのだ。
やったぁ。
ようやく、身分相応の部屋を得た事実に、景子は本当に喜んだのである。
変な話だが、いままで待遇が良すぎて、本当に落ち着かないことが多かったのだ。
ベッドとテーブルと椅子、服をしまう古びた家具と燭台。
それだけしかないが、十分だった。
窓を開けると、庭の隅が見える。
しかし──暑い。
都に近づくにつれ、分かってはいたことだが、初夏ほどの暑さだ。
中暑季地帯、というところに都はあるという。
日本で言えば、6~7月くらいの温度だろうか。
1年中こんな暑さの中を人は生きているので、町の人の半分ほどはアディマのような肌をしていた。
残りの半分も、どうしても日焼けの洗礼からは逃れられないようだったが。
うう、もう結構焼けたなぁ。
自分の両の手の甲を見ながら、景子は笑った。
しかし、周囲の人がみないい肌の色をしているのだから、日本の感覚で恥ずかしがる必要はないように思える。
シミという恐ろしい敵については、もはや考えないことにするしかない。
「明日、農林府に連れて行くことになるんだが…大丈夫かのう? あんたみたいなおじょうちゃんに、役人が勤まるかぁ?」
案内してくれた初老の男が、うーんと部屋の入口で唸った。
窓の外に目を奪われていた景子は、はっと振り返る。
そんな相手に、にっこりしてこう言った。
「32です」
「へ?」
「32歳です、私」
日本は、もう秋になっただろうか。
だとしたら、景子には誕生日が来ているはず。
だから、1つ年を足したのだ。
一生、31歳と言っているのは詐欺だろうから。
アディマに白状して以来、景子にとって歳の話はウィークポイントではなくなっていたのだ。
「32……」
とても信じられん──男の顔には、そう書いてあった。


