アリスズ


 都への門。

「うわぁ」

 景子は、その大きな切り出された白石の門を見上げて、感嘆の声をあげた。

 ダイが送ってくれたが、彼は門をくぐることはなかった。

 向こう側に立ったまま、こちらを見送っている。

 門で待ち受けていたのは、中年の男だった。

 髪を伸ばし、いい身なりをしている彼が、何者なのかはシャンデルに説明を受けていた。

 リサーの叔父で、シャンデルの遠い親戚。

 農林府の中堅職の役人、と聞いている。

「手紙は受け取っておる…まったく、どこの馬の骨ともしれん庶民など拾ってきおって」

 ブツブツ。

 神経質らしい動きで、景子の上から下まで眺め倒した挙句、顔を顰めて下さった。

 あ、あは。

 しょっぱなから、見事な歓迎っぷりだ。

 リサーの叔父ということで、頭が固いと予想はしていたが、見事な的中である。

「しかも、兄上を後見に農林府に勤めるなど…もし、兄上や私に恥をかかせた場合は、命と引き換えに詫びても足らぬぞ」

 相当の兄上好きなのか、男の言葉は本当に強く刺々しかった。

 景子は、神妙なふりでそれを受け流す。

 シャンデルの方が、脇でぷるぷると震えているほどだ。

 こういう威圧は、何故か平気だった。

 命のやりとりがあるワケでもなく、嫌われるのが怖いワケでもない。

 それに、自分と極力関わりたくないと思っているのが、はっきりと伝わってくる分、ほっといてくれそうだった。

「私の屋敷の隅に置いてやるのも、重々に感謝するがいい」

 家の心配をしなくていいのは、助かる。

「ありがとうございます」

 景子は、細かい話が全部通っていることに感謝をした。

 だが。

「シャンデルデルバータ…お前は、イデアメリトスの君のところへ帰るのだ。でなければ、お前の弟の出世の役には立つまい」

 お前は、あの方と一緒に帰ってくることに意味があるのだ。

 言葉に、シャンデルは震えながら頷いた。

 彼女にもまた、やるべきことがあるのだ。

 ああ。

 だから、ダイがまだそこにいたのか。