アリスズ


 彼女に出会ったのは、夜の草原の真ん中。

 太陽の目を持つアディマには、暗さはさしたる障害ではない。

 しかし、ケイコもまた暗い中、向かってくるアディマたちを捕えていたのだ。

 彼女に近づいた時、その黒い目は──アディマの金を反射した。

 一瞬だけ、激しく金色が閃いたのである。

 何か、言葉に出来ないものを、ケイコは持っていた。

 不思議な丸い硝子を鼻に乗せ、見なれぬ髪と服の彼女は、そうして何度となくアディマの視線を奪ったのである。

 後に、ケイコが魔法の力を持っていると分かった時、胸がしびれた。

 世界に、魔法の力を持つ一族は、3つしかないと言われている。

 1つは滅び、1つはごくわずかが、北の寒季地帯に隠遁している。

 残りの1つがイデアメリトス。

 そこに、どこの血筋でもない魔法の力を持つ娘が現れた。

 彼の目を、惹かずにはいられない、不思議な娘。

 イデアメリトスの血を、できるだけ濃く次代に受け継がせるため、婚姻は親族内で行うことが多い。

 だが、そのために、虚弱な子が生まれることも多かった。

 兄二人が、そうだったのだ。

 そのため、彼らは成人の旅を失敗した。

『外の血が、必要かもしれんな』

 カラナビル16である父親は、二人の息子の失敗に、そう呟いたのである。

 その言葉は、アディマに聞かせたものではなかった。

 髪を伸ばしている父親は、いまだ三十ほどにしか見えない。

 もしも、彼の四人の子供が全て失敗した場合、イデアメリトス以外の女性との間に子を成そう、とでも思ったのだろう。

 だが、彼は旅を成功させた。

 となると、都に戻って待っているのは、世継ぎの話と婚姻の話となるだろう。

 イデアメリトスではなく、魔法の力を持つケイコは、彼の伴侶にうってつけに見えた。

 いや、逆だ。

 目を──いや、心を奪われた相手が、魔法の力を持ってたのだ。

 伴侶になるべき運命だと、どうして思ってはいけないのか。

 魔法領域の木から彼女を引きはがし、自分の胸に強く抱きしめながら、アディマはうまく息を整えられずにいた。