☆
居心地の悪い旅路になった。
景子に菊──そしてリサー。
そんな三人で旅をすることになるなんて、誰が予想できただろう。
アディマ、大丈夫かなあ。
落ち着かない空気を吸いながら、景子は別れた彼のことを心配した。
ダイがいるので、ちょっとやそっとのことは大丈夫だろうが、シャンデルもいるのだ。
いくらダイでも、同時に二人を守るのは大変ではないだろうか。
そんな話を、菊にぽつりとしたら。
彼女は、ちょっと考え込んだ後。
「まあ、問題ないと思うよ」
そう、薄く笑ったのだ。
「若さんは、景子が思うほどひ弱じゃないってことさ」
付け足された言葉には、顔が赤くなってしまった。
アディマが小さい頃の印象を、まだ完全には拭えずにいることを、菊に見透かされた気がしたのだ。
「よその国の言葉で話すな…不快だ」
リサーの棘のある言葉に、景子はぴたっと口を閉ざす。
閉ざさないのは──菊だ。
「同じ船に乗ってる間くらいは、協力的であろうと思わないのかな…この男は」
堂々たる日本語。
それに、リサーは睨みをきかすが、菊はまったくこたえていない。
あ、あの、あんまり、ケンカは…。
彼が、一方的にムキになっているのは、分かっている。
しかし、彼だってこんなアクシデントは想定外で、どうしたらいいのか分かっていないのだ。
「す、すみません…面倒なことに巻き込んでしまって」
景子は、小さくなりながら言葉をかけた。
本当なら、いますぐアディマの元へ帰してあげたかったし、本人も帰りたくてしょうがないだろう。
「私は、私のためにここにいる。妙な気は遣うな!」
ピッシィ。
鞭を振るうようにしなる言葉に、景子はその場で踏みとどまれた自分をほめたいほどだった。
ただ。
リサーはリサーで、大きな何かを背負おうとしている自分を、ちゃんと知っていた。
あのアディマから離れることを、ついには決意したのだから。
居心地の悪い旅路になった。
景子に菊──そしてリサー。
そんな三人で旅をすることになるなんて、誰が予想できただろう。
アディマ、大丈夫かなあ。
落ち着かない空気を吸いながら、景子は別れた彼のことを心配した。
ダイがいるので、ちょっとやそっとのことは大丈夫だろうが、シャンデルもいるのだ。
いくらダイでも、同時に二人を守るのは大変ではないだろうか。
そんな話を、菊にぽつりとしたら。
彼女は、ちょっと考え込んだ後。
「まあ、問題ないと思うよ」
そう、薄く笑ったのだ。
「若さんは、景子が思うほどひ弱じゃないってことさ」
付け足された言葉には、顔が赤くなってしまった。
アディマが小さい頃の印象を、まだ完全には拭えずにいることを、菊に見透かされた気がしたのだ。
「よその国の言葉で話すな…不快だ」
リサーの棘のある言葉に、景子はぴたっと口を閉ざす。
閉ざさないのは──菊だ。
「同じ船に乗ってる間くらいは、協力的であろうと思わないのかな…この男は」
堂々たる日本語。
それに、リサーは睨みをきかすが、菊はまったくこたえていない。
あ、あの、あんまり、ケンカは…。
彼が、一方的にムキになっているのは、分かっている。
しかし、彼だってこんなアクシデントは想定外で、どうしたらいいのか分かっていないのだ。
「す、すみません…面倒なことに巻き込んでしまって」
景子は、小さくなりながら言葉をかけた。
本当なら、いますぐアディマの元へ帰してあげたかったし、本人も帰りたくてしょうがないだろう。
「私は、私のためにここにいる。妙な気は遣うな!」
ピッシィ。
鞭を振るうようにしなる言葉に、景子はその場で踏みとどまれた自分をほめたいほどだった。
ただ。
リサーはリサーで、大きな何かを背負おうとしている自分を、ちゃんと知っていた。
あのアディマから離れることを、ついには決意したのだから。


