アリスズ


「命の…光?」

 アディマが、確認するように復唱する。

 それだけで、景子は身がすくんでしまいそうだった。

 身体が縮こまって、動けなくなるのだ。

 彼の言葉に、頷きさえも出来ない。

 しかし、これでも景子は、言葉に大量の逃げ場を用意したのだ。

 少しの嫌悪でも見せられたら、彼女はダッシュで遥か後方に逃げ散らかす気だった。

「ああ…」

 ふと、アディマは何かを思い出した声をあげる。

 それだけで、景子の寿命は3年は縮んだ。

「だから…あの時、ダイエルファンを出し抜いた彼らが分かったのか」

 その上、彼は少しおかしそうに笑い出すではないか。

 は?

 景子は、話の飛躍にすぐにはついていけなかった。

「あの後の、ダイエルファンは本当に気難しい顔をしていてね。おそらく落ち込んでいたんだろう…あんな彼を見たのは、あの時が初めてだよ」

 あの時。

 景子は、一生懸命記憶を探って、該当するものを探そうとした。

「えっと…太陽の木の実の…町の…こと?」

 気配のない、二人の刺客に襲われた時のことくらいしか、思い当たる節がなかった。

「そう…あの時。あの時、ケーコがいてくれなかったら…僕も無傷では済まなかっただろうね」

 ええと。

 どんどんと進むアディマの言葉に、景子はついていけてなかった。

 彼は、いともあっさりと『命の光』なる言葉を飲み下し、その先の話に駆け抜けていたのだ。

 ああ、えっと、あの…。

 景子の方が、アディマをちょっと立ち止らせたくなるほど。

「あの…えっと…気持ち、悪く、ない?」

 おそるおそる。

 景子は、それを口にしていた。

「ケーコは…僕が気持悪いかい?」

 困ったように笑う、アディマ。

 そんな!

 景子は即座に、首を横に振った。

 振りすぎて、顔のパーツがどこかにすっ飛んでいってしまいそうなほど。

 何とか、顔のパーツは無事だったが。

「そういうことだよ…」

 アディマの優しい声に対応しきれず──変な角度で身体が固まってしまったのだった。