アリスズ


 お天道様の目。

 景子の頭の中に、祖母の言葉がよみがえる。

 彼女の目を指して、そう言ったのだ。

 そして、ついさっき。

 アディマに、太陽の目と言われた。

 彼が言葉にしたのは、単なる比喩なのかもしれない。

 しかし、彼は不思議な血を持つ人で──そういうものまで分かってしまうのかも。

 景子は、居心地悪くもじもじした。

 昔の記憶が、彼女の足かせになっている。

 しかし、アディマも不思議な血筋らしいから、言ったところで悪く思われることはないのかもしれない。

 だけど、でも、あの、その、あうう。

 足踏みをする彼女に。

「いいよ…無理に言わなくても」

 彼は、少し寂しそうに笑った。

 胸が、きゅっとしめつけられる。

 ああ、違うの。

 そうじゃないの。

 景子は、もどかしさで足をジタバタさせた──心の中で。

 アディマを信用していないとか、そういうことじゃない。

 ただ、臆病に輪がかかっているだけなのだ。

 子供の頃から、だんだんと厚くなったその殻。

 それを破るには、固くなりすぎてしまった。

 苦しい喉に、何か大きなものが詰まって、彼女から声を奪う。

「大丈夫だよ…ケーコ。太陽は、なくなったりしないから…雲に隠れても、夜になっても、また必ず出てくる」

 泣きそうな、顔になっていたのかもしれない。

 アディマの声は、優しくてまるで子供をあやすような音をしていた。

 ずっとずっと年下の彼に、こんな声を出させてしまうなんて。

 自分が、とても幼稚な生き物に感じた。

 がん、ばれ、私。

 景子は、空気しか吐き出せない駄目な唇を、奮い立たせようとした。

 厚い殻も、喉に詰まった塊も──全部景子が作り出したもの。

 それが、アディマに距離を感じさせたのだ。

「あの…ね……命の…光って…あるのか…なぁ」

 喉がカラカラで、声が掠れて消えていきそうになった。