アリスズ


「男ばかりの旅で、気苦労があっただろうからね…やはり、他に女性がいるのは心強かったのだろう」

 アディマの部屋。

 領主宅で過ごす夜、訪問した景子に、彼はシャンデルの話をしてくれた。

 勿論、本人のいないところで、だ。

「男の供は二人と決まっているが、女性は数には入らない。彼女は、リサードリエックの遠縁でね。僕の身の回りの世話に、と連れて来たんだよ」

 ああ、そうか。

 アディマの説明に、リサーの気持ちが少し分かった。

 少なくとも、神殿に着くまでのアディマは、子供の身体だったのだ。

 歩みも遅いし、疲れるのも早い。

 そんな身体の小さな彼の世話を、無骨な男だけでは出来ないと思ったに違いない。

 自分の遠縁であれば、もし女の身のシャンデルが旅を続けられないと判断した場合、置いていく決断もしやすいだろうし。

「でも…女性は数に入らなくてよかったよ」

 ふと、アディマが小さくそれを呟いた。

「え?」

 想像中だった景子は、うまく耳が音を拾えていない気がして、彼を見る。

「女性の数が決まっていたら、ケーコたちを連れては行けなかったろう?」

 優しい、けれども吸い込まれそうな猫目石の瞳。

 ああ、そうだ。

 最初にこの瞳に、目を奪われたのである。

 子供の外見とは裏腹な、深い深い瞳。

「何で…」

 景子は、瞳に吸い込まれながら、そう唇を開いていた。

「何で…私たちを連れて行こうと思ったの?」

 アディマの旅とは、彼女らはまったく無関係だ。

 連れて行く必要性の方が、ないように思えた。

 アディマは──両目を閉じる。

 何かを思い出すように、少しの間そうしていた。

「初めて会った時…ケーコの目の中に…太陽が見えたからだよ」

 瞳が、開く。

 琥珀金の瞳が。

 景子は。

 ドキッとギクッを、同時に抱え込むこととなったのだった。