アリスズ


「僕の護衛が成功して、無事に都に帰れば、ダイエルファンの階級も特進するだろう…本人にとっては、邪魔かもしれないけどね」

 アディマは、ダイのことをよく分かっているようだった。

 だが、きっと思ったのだ。

 あの愚直な男は、もう少し上にいってもいいはずだ、と。

 ダイの話を、彼の口から聞ける日がくるとは、思わなかった。

 だから、景子はいろいろと質問をしたのだ。

 ダイは農家の末の方で、外に出なければならなくて兵に志願したとか。

 身体が大きく、腕っぷしも強かったため、衛兵にまではすぐなれたとか。

 へぇ、農家なんだ。

 景子は、通り過ぎてきた農村を思い出して、ますますダイに親近感を持った。

「で…ダイさんは…」

 しかし、更に問いかけようとしたら、アディマが表情を微かに曇らせているではないか。

 何か変なことを聞いたかと、景子が首を傾げると。

「ケーコも、随分ダイエルファンに懐いているようだね…」

 と、言われてしまった。

 カァっと、恥ずかしくなって景子は赤くなる。

 一緒に旅をしている人のことを、知りたくなるのは女性の常だ。

 そんな女の浅はかさを、アディマに見られた気がして恥ずかしかったのである。

 確かに、一番身分がなさそうで、一番楽な相手はダイだったのだが。

「だ、だって…リサーの話だと、なんだか難しそうで…」

 しどろもどろになりながら、景子が言い訳をすると。

 何を想像したのか、アディマは気が抜けたように笑い出した。

「え? な、なに? アディマ…何かリサーに面白い話でもあるの?」

 珍しいその姿に、景子は思わず食いついてしまう。

 あのリサーに、何か猛烈な笑い話があるのかと思ったのだ。

 しかし、アディマは違うと言いたいかのように手を振りながら、ひとしきり笑い続けた。

「そうか…ダイエルファンの話が、一番身近で分かりやすいのか」

 何故か。

 リサーから、ダイへと話が戻っていた。

 何で…あんなに笑ったんだろう。

 景子には、分からずじまいだった。