「あいつに泣かされたからな」

ポツリと、一也さんが言った。

「泣かされたって?」

「あいつと一緒に遊んでいる時に、よくイジメられたって言うか遊ばれたって言うか…そんな感じ」

何とも言えないような複雑な顔で、一也さんが言った。

「あいつ、昔っから活発なところがあったんだよ。

自分よりも年上のヤツとケンカもするし、とにかく大変だったな。

一言で言うなら、面倒だった」

「へえ」

そんなエピソードがあったとは、何だか得した気分だ♪

「まあ、今となっちゃいい思い出話だよ」

一也さんが笑ったので、私もつられて笑った。

ひとしきり笑った後で、一也さんが私の前に自分の手を差し出した。