コンコンとドアをノックする音が聞こえた。





「はい。」


「樹さん、時間大丈夫ですか?」


「ああ。」





そう言うと、部屋を出て行こうとしたから呼び止めた。





今さらありがとうなんて遅すぎるかもしれない。





それに、ありがとうなんて言えば盗み聞きした事になる。





「どうしたんですか?」





誤魔化すなんて一番情けないよな。





「すまない…実は、まりあ達の話しが聞こえて……。」


「えっ、ごめんなさい…。煩かったですよね。気をつけます。」





また無理して笑う…。





そうじゃないんだ―――…。





「違う。盗み聞きして悪かった。それと、あの時はありがとう。あの時、かなり酔っててまりあだとわからなかったんだ。情けないな…。」


「そんな事ないですよ。気にしないで下さい。」





ふんわりと笑うまりあから目が離せなくなる。





まりあってこんな顔だったか?





ぱっちりとした目に筋の通った鼻、ぷっくりとした赤い唇。





髪だってストレートじゃなくてちょっとくせ毛でフワフワとウェーブがかかってる。