なんとか彼女を思い出そうと記憶を辿るが、赤いコートに黒のブーツ、黒のマフラーとストールしかない。




手がかりにもならない声も思い出せない。





どうしようもないな……。




深くため息をついて、ありがたく二日酔いの薬を飲む事にした。





その日からだった。





なんだがその女性が気になり始めた。





会いたい――――…会ってお礼を言いたい。





酒を飲むたびに彼女が脳裏をよぎる。





酔えばまた会えるんじゃないかと浅はかだった。





「大丈夫ですか?」





彼女の夢を見る時はこの言葉から始まる。





髪を優しく撫でられなんだか気持ちいい。





「気分はどうですか?」





夢にしてはリアルだと頭が覚醒し始める。





「大丈夫ですか?」





また始まりの声がして、うっすらと目を開けるとまりあがいた。





「まりあ……?」


「おはようございます。気分はどうですか?」





完全に目が覚めてしまった。





「あ、ああ、大丈夫だ。」

「頭は痛くないですか?」

「ああ。」