腕に擦り寄って甘えた声を出してくる。





まりあとは大違いだ。





「お嬢様って本当にバカなのねー。私の嘘に騙されて泣き出したのよ?可笑しいったらありゃしない。何度もごめんなさいって……あはははっ、本当に笑えるわぁ〜。」





悪びれもなく笑いながら話す冴子に嫌悪感を感じる。





こんな女と付き合ってたなんて……。





「触るな。お前とヨリ戻す?バカ言うな。もう会うつもりもない。会社でも話し掛けないでくれ。」


「なんで!?どうしてよ!?樹の為にしたのよ?」





バカか―――…。





「そんな事、いつ頼んだ?」


「待って樹!」





席を立つ俺の腕を掴み、泣きながら懇願してくる。





それさえも鬱陶しい。





「俺とお前は大分前に終わってる。俺が好きなのはまりあだ。」





そう言い、手を払って店を出た。




冴子にも苛つくが自分にも苛つく。





もっと早く認めればよかった。





好きだと、まりあが大切だと言えばよかった。





呆れすぎて、今日も盛大なため息が漏れる。