｢お嬢様、本当にいいのですか?｣

｢はい…。｣





樹さんから逃げた後、待機していた車に乗り込み自宅まで送ってもらう。





樹さんの前で初めて泣いてしまった。





しかも下らない理由で………。





樹さんは社会人で大人の付き合いってものがある。





働いてもいない親のお金で甘やかされて育った子供の私にはわからない。





だからあんな我儘を言って困らせてしまった。





勝手に怒って泣いた私をわざわざ探しに来てくれたのに……。





樹さんの笑った顔初めて見たの。




コロコロと表情を変え楽しそうに話す2人を見ていたくなかった。




｢お嬢様、着きましたよ。中までお送り致しましょうか?｣


｢いえ…ここでいいです。ありがとうございました。｣





車を降り見送る事もせず、玄関ホールに向かった。





エレベーターに乗り、部屋まで上がる。





ロックを解除し、玄関を開けると家の中は真っ暗。





当然なんだけど、なんだか寂しい…。





ゆっくりとした動作でヒールを脱ぎ、部屋に向かった。