昔からちょっとだけおっちょこちょいなあっちゃんが、朝おうちに忘れていったお弁当。

それを届けにきたのに。


受け取るどころか、

無視をして私の横をすり抜けて、廊下をけだるそうに歩いてく彼の後ろ姿に思わず……



「ま…、待ってあっちゃんっ!!」



…禁句の“あれ”を、叫んでしまったのです。






「……ハッ……!」


気づいた時には、時すでに遅し。


“あっちゃん”


それを耳にした瞬間、ピクリと肩を揺らし足を止めた。


そして…彼の辺りの空気が、瞬間冷却のように一気にビュオオオー…と凍っていった。


や、ま、マズイ…。


クルリと振り返り、すごい迫力でゆっくりとお弁当を握りしめた私の元まで近づいてくる。


…そして。





──ダンッ!!!


シーンと静まりかえる廊下に、彼が思いっきり壁に手をついた大きな音が…響き渡った。