「へ……、」
聞き覚えのある冷たい声に、顔をあげる。
「…何してんだよ」
眉を寄せて私を見下ろすそこにいるはずのない人物に、目を丸くする。
濡れていた瞳が、すぅっとゆるやかな風で乾かされた。
どうして……、
「あ、っちゃん……?」
唇からポロリとこぼれてしまった彼の嫌がる特別な呼び名を聞いても、今のあっちゃんは怒らなかった。
「……ほら。」
その代わりに、左手が差し出される。
「あ……」
昔の頃とは違う、おっきくて、ちょっとごつごつしたあっちゃんの手。
少し起き上がってちょっと冷たい手の平を恐る恐る掴むと、彼は優しく私を立たせてくれた。
「あの…、あっちゃ……」
「…いくぞ」
思わぬ出来事に混乱している私に、あっちゃんはぶっきらぼうにそう言い放った。
