「己の限界を諦めず、前に進もうとしている者は強い」

「!」

 強い……?

「こんな僕が強いっていうの?」
「見える力だけが強さではないよ」

 サナはベリルの言葉に、手にした剣とマメだらけの手を見つめた。

「心の強さこそが、真の強さだと言える。お前は、親の強さを受け継いでいるではないか」

 他者を守ろうとする意志。子どもに死を乗り越える強さを教えた母親。

「犬死にという死など存在しない。無駄なものは何も無い。それが我らの教えでありこの世界の理」

「……」

 ベリルの言葉に、サナは目を閉じる。

 そうか……そうだった。父さんも母さんも、目に見える強さを僕に教えていた訳じゃなかった。

 心の強さ。僕は、それを忘れていた。

「……ベリルは来年、旅立つんだっけ」
「うむ」