「はい、美波ちゃん。」
そう言って、ケーキを机に置いていく稚早のお父さん。つまり、この店のオーナー。
目の前には頼んでもいないみたこともないケーキ。
「おじさん、これ…頼んでないよ?」
「なぁに、久しぶりの美波ちゃんだ。このくらいおじさんのサービスだよ。みんなも食べてっておくれ。」
目尻が垂れてて、朗らかな雰囲気の優しい笑顔。
やっぱりおじさん、いいなぁ。
癒される。
どっかのバカ息子はホントにこの血を継いでるのかしら。
おじさんの言葉に甘えて、パクッと一口ケーキを口に入れる。
甘すぎなくて、フワってとろける感じ!!
美味しい!!!!
ついつい夢中で完食してしまった。
さっきの悲しみもどっかにふっとんだような気持ちになれた。
慎吾たちも口々に「美味しい」と連呼。
それをカウンターで聞いてるおじさんはとても優しい笑顔でこっちを見ていた。
おじさんや目の前に座る真琴やその隣の慎吾にばかり目がいって、気づかなかった。
晃がわたしを見ていたことを。
哀しい眼差しだったことを。
わたしはまったく気づけなかった。