これは俺の親友が結婚した時の話。

―――――――…


「見違えたな」

「綺麗」

感嘆の言葉が自然に零れる。


「…慎吾、美波」

俺と俺のとなりにいる涙ぐむ美波を呼ぶ声もいつもよりもおしとやかで衣装にもぴったり合っていた。


もともとキレイだからキレイじゃないわけがない。



「真琴、ほんとにキレイよ」


美波にそう言われる真琴は真っ白なウエディングドレスに身を包んで少し俯きかげんで少し涙目のように瞳が潤んでいた。



この10年以上もの間、真琴に彼氏なんていう存在ができないでいたことに少なからず罪悪感があった。

俺にも責任はある。

そう思うのは当然で、高校で別れるまで関係を引きずってきたのは確かだったから。



美波に俺じゃない相手が傍にいることも、その男に美波が微笑むのも一人じゃ堪えられなかった。


でも、こうして真琴のウェディング姿を見られてホッとしてる。

真琴はホントにいい女だと思ってる。


優しいし、気配りできるし、明るいし、なんだかんだで人の気持ちを考えて行動できる子だから。

そんな真琴に出逢った男はホントに恵まれてると思う。



だから、どうかどうか幸せにしてくれ。

俺が罪悪感を持たなくて済むようにとかそんなんじゃなくて、真琴には幸せになってもらいたいんだ。

だって、真琴は俺たちの親友だろ?

その親友が悲しむことがあればどんなことだろうと俺たちは一緒に悲しくなる。

幸せだったら俺たちも幸せ。

そんなもんだろ。

真琴もそうだろ?


ヴァージンロードをゆっくりと歩き、新郎の元へと進んでいく後ろ姿を娘の成長を垣間見た父親のような気持ちで見送る。

どうかこの道が幸せへの一本道でありますように…


なぁ、真琴。

あの時があっての今、真琴の進む道が幸せだったらあのことも必要だったと思う。


だから、もう一度あの頃に戻ったとしても今の幸せにたどり着くのに必要なら絶対に真琴と付き合うし、あの悲しさや怒りも引き受けるよ。


隣の美波の指をそっと絡ませる。


だって、俺も隣に美波がいることを幸せに感じてるから。


fin.