今日、わたしは結婚します。

――――――…

初めてあなたを見たとき、悲しそうな瞳に惹かれた。


なにに対してそんなに怖がっているのか全く分からなかった。


でも毎日話して、話して、ついにそのわけが分かった。


“ミナミ”


幼なじみでとても大切な人で、一番傷つけてしまったと言っていた。


嫌われる前に、嫌いだと言われる前にここに逃げてきたと。


そんなに思われてる“ミナミ”に何度も何度も嫉妬した。


そして気付いた。


わたしはあなた、アキラが好きだと。


でも全然振り向いてくれない。


毎日傍にいるのはわたしなのに…


考えてるのはいつもミナミのこと。


『美波はこの世界でたった一人の大切な人』


アキラは話してくれた。


だったらわたしは?


わたしはアキラのなにになれる?


わたしは、アキラの傍で支えあいたい。


そんな葛藤が続くなかミナミが現れた。


当たり前のようにアキラの隣に座り、当たり前のように抱きしめる。


そんな二人を見ていたら入る隙間なんてないと思った。


二人にとってはそれが当たり前でわたしとアキラでは成り立たない。


とても歯がゆい思い。


でも、ミナミは日本にミナミの大好きな人がいて、その人以外考えられないって言ってきた。


ミナミのその瞳はとても優しくて、愛しそうで、何より悲しそうだった。


その時、ミナミにも葛藤があったんだと思った。


アキラの気持ちを知りつつもそれに応えられない自分との葛藤。




だから諦めたくないって思った。

ミナミのこと忘れられる日まで待とうって決めた。


アキラの大学にもほとんど毎日迎えに行った。


できる限り一緒にいようとした。


だけど、ミナミの影は消えなくて苦しいままで、どうしようもなくツラくなって…、逃げた。


好きでいることも、傍にいることもツラいから逃げた。