「如月!」


「はい」


「お前の昇格が決まったぞ」


そう上司に告げられて、嬉しいっていうよりもめんどくさいって思った。


また地位目当てで近づいてくる女が増えやがる。


めんどくさい以外のなにがあるってんだよ。


少しばかり不機嫌になっていると、


「主任、コレ」


そう言って俺の前に書類を出してきた。


「あぁ」


「それと、はい」


そう言って俺の机の上に缶コーヒーを置いた。


いつも俺が好んで飲んでるもの。


そうなんだ。
こういうとこも好きなんだ。


キミはみんなの好みを把握している。


気配り上手だ。


「ちょっとした昇格祝いです」


そう笑うキミにもっと俺は好きになる。


キミの笑顔が今は俺に向けられてる。


キミの笑顔が見れるなら昇格もいいもんだと思う自分は単純だと思う。


いつか振り向いてほしい。


笑顔を独占したい。


俺の片思いはいつまで続くのか。






藤崎真琴


俺はキミに恋してる。


―――――――――――…


「雅樹さん?」


昔を思い出して懐かしい気持ちになっていた俺はキミの声で我にかえる。


キミがふふっと笑うとなんだか俺まで嬉しくなって、キミの身体を引き寄せ抱きしめる。


「どうしたの?」


そう言いながらもちゃんと俺の背中に回されるキミの小さな手が幸せだと思う。


「キミが好きだ」


「あっ、ちゃんと名前で呼んで」


ちょっと膨れっ面になって少し身体を離す。


そんなキミにも愛しさしかわかない。


「真琴、好きだ」


キミは笑うとまた身体を密着させた。


「わたしもです。
雅樹さんが好きです」


キミの笑顔は俺に向けられてる。


キミにしか俺を幸せにできない。


だから、キミが傍にいる俺は世界で一番幸せだと感じることができるんだ。


fin.